【経営コラム】コストの上昇を価格に転嫁できない社長は【安売り症候群】という病です。
…価格を売るための道具に使ってはいけない!
前回号の続きです。
『値決めこそ経営』(京セラ名誉会長、稲盛和夫先生)、この言葉を肝に銘じてください。
どんなに良いものを創りだしても、その値決めを間違えると台無しになります。故に、値決めは大変難しい最高レベルの経営判断事項です。であるにもかかわらず、値決めを安易に、どちらかというと安めにつけてしまう経営者は少なくありません。松下幸之助先生はその著書の中で、パナソニック(当時松下電器)は、相当大きくなるまで、松下幸之助先生自身が値決めの最終決裁をされていた、と語っておられます。
「自社の値決めが正しいのか?」
この解は誰にもわかりませんが、少なくとも多くの手間暇と知恵を最大限投入して、悩んで、悩んで、悩み抜いて決める…この習慣を持っていただきたいと思っています。
過去(この数十年)において、日本の企業の多くが、どちらかというと安すぎる値決めを繰り返してきたために、今の経済の停滞(デフレ)を招いたのではないかとの仮説を持っています。
特にこの傾向は中小企業に顕著です。
以下、【安売り症候群】という疾病を整理いたします。
■【安売り症候群】という疾病の正体は…(有病率50%)
- 価格を売るための道具に使うと「繁盛貧乏」になります。
「値決め」は経営の要諦です。であるにも関わらず、値決めに掛ける手間暇が少なすぎると思っています。総じて安く付けすぎているとも思っています。間違えた「値決め」が経営に与えるダメージを過小評価してはいけません。
経営者は閑散な状態を嫌います。故に、安すぎる「値決め」をして、貧乏しても繁盛したいと考える傾向があります。「繁盛貧乏」がはびこるのはこのためでしょう。
経営者は楽な道を選びます。苦労して付加価値を積み上げるよりも、価格を低く抑えて価値とバランスしようと考えてしまいます。価格を売るための道具に使ってしまいます。
安売り戦略の大罪は、良いものを創り出そうとする知恵を奪い取ることです。この愚策を長年続けている集団から、新たな商品やサービスを創り出す創造力は生まれません。商品やサービスの価値と価格のバランスは、その価格を下げて市場に合わせるのではなく、その価値を向上させることで調整してください。
多くの偉人たちが語る経営の王道です。
- 「値決め」が弱気で利益を出せない経営体、さらに、新しい価値を生み出す創造力を無くしてしまった経営体を『安売り症候群』と呼びます。
- 『安売り症候群』の経営体には、以下のような症状が現れます。
- 頑張っているのに儲からない。
- 新しい商品、サービスを創造できていない。
- 利益は出なくて良い、と思うことがある。
- 値上げをしたいと思っていてもできない。
- ぎりぎりの経営をしていると感じる。
いかがでしょうか? - 病名:『安売り症候群』を整理します。
値決めに対する姿勢が弱気で、利益管理も曖昧になる病です。
●原因
安くないと売れないとの思い込みが原因です。良いものには相応の値段を(それなりのものはそれなりの値段を)付けてください。良いものを安く売る必要はありません。原価が上がれば価格を見直す、この当たり前の企業行動を取らなければ、利益がどんどん減ります。利益が薄くなればなるほど、良いものを作ろうとする知恵や創造力を失います。最後は、薄利は善、利益は悪の心境に陥ります。こうなると末期です。
●症状
二つのレベルに分かれます。繁盛貧乏のレベルが第一段階です。このレベルは頑張っているのに値決めを間違えていて儲からない状況です。この段階では価格の見直しを行えば容易に治癒できます。第一のレベルを続けていると、頑張っても儲からないと思い込み、頑張る意欲、より良いものを創造しようとする力を失くしてしまいます。最後には、儲からない自分を正当化するために、儲けは悪、儲からないことが善、ビジネスそのものを否定するようになります。
※『値決めこそ経営』(京セラ名誉会長、稲盛和夫先生)です。「値決め」には、多くの手間暇と知恵を最大限投入して、悩んで、悩んで、悩み抜いて決める…この習慣を持っていただきたいと思っています。「値決め」は現場ではなく、トップが決めるべき事項です。