【実践コラム】コロナの影響を受けた企業は借入をすべきか否か
経営者にとっては本当に悩ましい局面です。
新型コロナウィルスの影響がますます大きくなっています。売上高20%減は当たり前、中には売上高が80%減の関与先様もあります。この前代未聞の事態に対抗するための支援策として、日本政策金融公庫や保証協会による融資が用意されていますが、「結局は返さなくてはならない。お金は借りたくない。」という声も多く耳にします。
確かに今回の借入は前向きなものではありません。赤字補填を目的とした後ろ向きの借入ですので、今後業績が回復したとしても返済が重くのしかかってきます。経営者の方々は本当に悩ましい局面に直面していらっしゃいます。
ある関与先様の事例です。経営していた4店舗のうち3店舗が閉店することになりました。残り1店舗も大変な窮状です。社長様も茫然自失となり、手元現金で借入を全額返済して会社を閉めようかとおっしゃいました。正直何とお声掛けをして良いか分かりませんでしたので、ただただお話を聞くしかありません。
財務担当者の主な役割は資金調達です。新しい店舗を出したい、更に売上を伸ばすために仕入を増やしたい、社長様の事業意欲があって初めて活躍の場が与えられます。こちらの社長様とも売上が現在の半分だった時からご一緒させてもらっています。
調達した資金で店舗を増やしながら順調に業績を拡大するなど、大変有意義な時間を共有させていただきました。
社長様に会社を閉めてどうするのかとお聞きしたところ、勤めに出るしかないとおっしゃいます。ただ、学歴や年齢を考えると仕事がないのではとの不安も口にされます。これまで経営者としてやって来られた方が勤め人になる難しさもあるでしょう。
経営者が経営をやめた後のリアルな人生です。この日は方向性を決められず面談を終わりました。
数日後、社長様から連絡があり、いろいろ考えた結果、やはり借入をして新しい事業に挑戦したいとおっしゃいました。コロナ関連融資で3,000万円程度の調達が見込まれるため、1,000万円から1,500万円の投資規模で始められる事業を考えておいてくださいとお伝えしました。
この判断が正しいかどうかは分かりません。ただ、経営者様にとっては、これ以外の選択が困難であることも事実です。社長様が事業意欲を持つ限り、財務支援を続けたいと思います。