【実践コラム】事業承継対策の事例
…自己株式と無保証借入により事業承継対策を行った事例をご紹介します
卸事業を行うA社様の事例です。
会社の幹部に経営を引き継ぎたいと考えており、そのための対策が求められていました。
事業承継時に最もよくある課題は下記の2点です。
1.事業を譲り受ける方が株式の購入資金を用意できない。
2.会社の借入に対して連帯保証をすることに抵抗がある。
A社も同様に上記の課題に直面していました。資本金は1,000万円(1,000株)ですが、幹部の方が個人的に用意できる資金は100万円程度であり、議決権の過半数も取れない状況です。
この問題は自己株の買い取りにより解決しました。自己株の買い取りとは、社長が持っている株式を、会社が自ら買い取る方法です。会社が買い取った株式は議決権を持ちませんので、社長が保有している株式1,000株のうち、900株を会社に900万円で売却しました。これにより、社長は900万円の売却代金を手にしたうえで、残りの株式だけで100%の議決権を維持できます。残った100株を幹部の方に100万円で売却すれば、議決権の100%を引き継ぐことができます。
次に個人保証の問題です。国は、できるだけ経営者から個人保証をとらないようにしようと「経営者保証に関するガイドライン」を定めましたが、実務上は銀行も保証協会も簡単には無保証に応じてくれません。最もこの制度に積極的に取り組んでいるのは日本政策金融公庫です。
A社も個人保証のついた借入が3,000万円超ありましたが、日本政策金融公庫より4,000万円の無保証借入を行うことができたため、既存の金融機関とは交渉がしやすくなりました。
もちろん日本政策金融公庫は既存借入の肩代わり資金として融資をしてくれた訳ではありませんが、交渉が難航すれば一括返済という最終手段で対応できます。
これらの事業承継対策は短期間に行った訳ではありません。特に自己株の買い取りは、株価の問題もあるため、複数年に分けて行っており、自己株式の買取についても、金融機関の資金協力があって実現しました。
事業承継時にネックとなる問題は、「資金」です。事業承継を考えておられる経営者様は、是非ご相談ください。