【実践コラム】創業融資の次の資金調達事例
…スムーズに成長軌道に乗せるためのポイントを解説します
創業融資は、事業を軌道に乗せるまでに必要な資金の借入です。
事業が軌道に乗った後は、成長軌道に乗せるための資金調達を改めて行う必要がありますが、この成長資金を十二分に獲得できるかどうかで、その後の成長曲線は大きく変わります。成長資金の調達に失敗し、せっかく軌道に乗った事業が収縮してしまったり、思うように成長曲線を描けなかったりする企業を多く見ていますので、成長資金獲得のポイントをA社の事例で解説します。
会社名A社
事業内容:インターネット通信販売
営業年数:個人事業2年、法人1年
個人事業にて通信販売を始めたところ、創業2年目で売上高が1,000万円を超えてきたため、法人成りをしました。法人成りをするタイミングで、日本政策金融公庫から300万円の創業融資を受けました。
調達した創業資金を元手に、事務所の整備や人材の雇用を行い、売上高は順調に拡大していきました。また、法人1年目の期中に保証付き融資500万円も調達することができたため、その後の業績は予想以上で推移しました。
しかし、利益や借入金の大部分は、仕入や人件費等の投資に回していますので、利益は上がる一方で、資金繰りにそれ程の余裕はありません。そのような状況の中、法人1期目の決算を迎えることとなりました。
A社の社長様が気にしたのは税金です。周りの先輩経営者からのアドバイスもあり、保険の加入や車の購入をしたいとの相談をお受けしました。ここが大きな分かれ道です。
1.初年度の業績が思いのほか良かったため無理な節税を行う。
2.節税によって本来の税額よりも多額のキャッシュが流出する。
3.手元資金が苦しくなるが利益を圧縮したため決算内容も悪く金融機関から相手にされない。
4.常に資金が不足している状況に陥り思うように成長戦略が描けない。
本当によくお見受けするパターンです。A社の社長は優れた事業力があり、資金があればもっと事業を伸ばせると思いましたので、節税より、ファイナンスを活用した拡大戦略の方が、未来が開けることを粘り強く説明しました。
最終的に社長様も納得いただき、初年度の売上高は8,000万円、経常利益700万円で決算を行いました。200万円弱の税金を納めましたが、申告後すぐに2,000万円の資金調達を行うことが出来、その後倍々で売上高を増やすなど、無事に事業を成長軌道に乗せることができました。
創業黒字化という局面が事業面で最も難しいところですが、無事に黒字化を達成した企業でも、財務戦略の失敗により立ち行かなくなるケースがたくさんあります。1期目、2期目の決算が大変重要です。