【経営コラム】事業性評価融資で変わること、変わらないこと(その3)
…事業性評価の良い事業、企業価値の高い事業とは何か?
前回のつづきです。
事業性評価を行うアプローチは企業価値を評価するアプローチと似ています。多くの投資家から自社株の売買という洗礼を受け続ける上場企業の例で解説します。
上場企業の企業価値(時価総額=株数×株価)は、その企業に対する事業性評価の結果です。
■例えば、以下の2社の企業価値は概ね同じです。
◆A社(マザーズ市場)
売上高(連結) 約20億円
営業利益 ▲12百万円
◆B社(東証1部市場)
売上高(連結) 約280億円
営業利益 770百万円(純利益215百万円)
時価総額=企業価値=約200億円です。
(平成30年6月初旬直近決算値概算)
上場企業の最終到達点企業価値は、概ね純利益の14~15倍※です。株式市場(投資家)は、この「A社B社の近未来の純利益が13~14億円までは届く」とみているようです。故に、現時点における企業価値約200億円を総意として容認しています。
〔※上場企業はその信頼性とリスク分散・流動性の担保により、14~15倍の将来利益が企業価値に織り込まれています。一方、未上場企業は、概ね3~5倍の将来価値を見込むのが一般的です。〕
「A社B社の近未来の純利益が13~14億円までは届く」、この見立てが変われば、株価は上にも下にも動きだします。
現に日々動いています。これが上場企業の株価です。
(※株価を構成する要素はたくさんあります。一つの考え方としてご理解ください。)
なぜ、売上高も利益も大きく異なるA社とB社の企業価値が近似しているのか?ここに事業性評価の考え方が組み込まれます。
「A社は、足元は悪いが、その事業立地やビジネスモデルが相当おもしろいので、近い将来相当利益を上げてくれるはずだ。また、経営陣も信頼できる。」このような評価が存在するはずです。
A社ほどではありませんが、B社に対しても、その安定性と成長性から高い評価を与えています。B社に対しても、市場は純利益の90倍以上の企業価値を容認しています。
足元の経営数値だけでなく、その事業の立地やビジネスモデル、成長性の実績を評価して、将来に対して総合的な企業価値を与える、これが上場企業に対する投資家の評価です。
■事業性評価の良い事業、企業価値の高い事業とは何か?
この疑問に対する解は多数ありますが、一つのアプローチとして以下の4つが挙げられます。
1.市場規模が適切で、(力相応)一番を狙える事業に取り組んでいる。
2.急成長市場に着眼して、(力相応)一番を狙える事業に取り組んでいる。
3.市場は縮小しているが、残り福(居残り一番)を狙える事業に取り組んでいる。
4.(大き過ぎない)市場を自らが創造できそうな事業に取り組んでいる。
「一番と二番の違いは、二番と百番の違いよりも大きい。」
船井総合研究所創業者、船井幸雄先生のお言葉です。一番になると利益が期待できます。また、それが成長市場であるなら、長期間にわたって続きます。故に、一番は偉大です。
一方、創業事業者や中小事業者が一番になるためにはどうすればよいか?これが事業立地の選定です。具体的には、『提供する商品やサービス、さらに受け手の顧客層の両方を絞り込む(Simple化)ことで、自社が一番になれる市場を創ること』を指します。創業事業者や中小事業者でも一番になる道はあります。
A社(マザーズ市場)は、AIを使って、巨人たちの隙間をつくある分野での一番を模索しています。故に、市場は高い評価を与えているようです。
一番になれる市場を創造してください。創業事業者や中小事業者でも一番になる道は必ずあります。そして、これこそが経営者に課せられた最大のミッションです。どこにでもある、誰でもやっている、何番目かわからないような事業からは脱却しましょう。そのためには、提供する商品やサービス、さらに受け手の顧客層の両方を絞り込むこと(Simple化)が重要です。
※銀行融資プランナー協会の正会員である当事務所は、クライアントに『お金の心配をできるだけしない経営を行ってもらう』ための新しい機能(=金融機関対応を含む財務の機能)を持つことを宣言いたします。我々は、『税理士』ではなく、『新・税理士』です。遠慮なくご相談ください。