【実践コラム】創業融資で3,000万円を調達した事例


…実際の調達事例を基に創業融資のポイントを解説します

先日資金調達のお手伝いをさせていただいたAさんの事例です。
勤めている会社を退職し、株式会社を設立して、店舗を作りたいというご相談でした。

■ 創業プランは以下のとおりです

事業内容:一般消費者向けの小売業態
総投資額:6,800万円(設備6,000万円+運転800万円)
調達内訳:自己資金800万円、勤務していたメーカーからの借入3,000万円、金融機関からの借入3,000万円

勤務していたメーカーから3,000万円の資金支援を受けられる予定ですが、総投資額が大きいため、金融機関からも3,000万円の調達が必要です。創業資金の最も有力な調達先は日本政策金融公庫ですので、今回も日本政策金融公庫からの調達を主として調達の計画を立てました。

■ 公庫の創業融資のポイントは以下のとおりです。

【自己資金】
創業融資審査における最も重要なポイントは自己資金です。自己資金は多ければ多いほど良いのですが、日本政策金融公庫は、最低でも総投資額の10分の1以上の自己資金を求めています。
今回の総投資額は6,800万円で、自己資金は800万円ですので、自己資金の要件は何とかクリアしています。ただ、800万円という金額は、資本金として事業に費やす資金であり、800万円の他にも、世帯の貯蓄として500万円程度を有していました。

【キャリア】
次に重要なポイントはキャリアです。創業する事業に対する経験や実績が重視されます。Aさんはメーカーに勤務していましたが、小売店の販売を指導する職務に従事していました。数多くの店舗の状況を把握しており、ビジネスとして採算が合うことを確信したうえで、今回小売店として独立するため、キャリアは十分です。

【総投資額】
融資審査で最も大きな懸念点となったのは総投資額です。申し込み要件には明確には記されていませんが、最初は1,000万円程度までの小さな投資から始めることが安全だと考えられていますので、6,800万円という初期投資額が問題となりました。

調達金額が大きい場合の対処法は次が有効です。

1.公庫の単独ではなく、民間の金融機関からも資金を調達する協調融資で案件を組み立てると、公庫のリスクが軽減されるため、希望通りの金額を調達できる可能性が高くなります。

2.融資制度のひとつである「経営力強化資金」で申し込むと希望通りの金額を調達できる可能性が高くなります。経営力強化資金を利用するためには、認定支援機関の助言を受けて作成した事業計画書を提出する必要があります。

本件も、公庫経営力強化資金2,000万円、民間金融機関保証付き融資1,000万円で案件を構築し、満額の資金調達ができました。

最後に金融機関の担当者にお話を聞いたところ、「金額が大きく難しい案件だったが、自己資金とキャリアがしっかりしていたことに加え、計画書類が充実していたこと、個人資産の開示等に協力的であったことが決めてとなった。」とおっしゃっていました。

初期投資の大きな事業で創業予定の方は、是非、参考にしてください。