【実践コラム】取引条件に拘りましょう
…取引条件で自社のキャッシュフローが大きく変わります
弊所の顧問先様で、創業から順調に業績を伸ばしているA社があります。もちろん営業的な面が上手く行っていることが主な要因ですが、借入れをしなくても資金繰りに困らない取引条件でビジネスをスタートできたことも大きな要因です。
信用力が低く銀行借入れが困難なスタートアップ企業は、仕入や人件費等の支払日より、売上金の入金が先にくるよう、販売先や支払先と交渉しなくてはなりません。もし支払日が1日でも前になってしまえば、売上金が入金されるまでの立替資金が必要になるため、銀行等の協力が成長の絶対条件となってしまいます。
A社は、売上は末締めの翌月末回収である一方、仕入は25日締め翌々月5日払いとしています。毎月末日に回収した資金を5日の支払資金に充てることができるため、銀行の協力がなくても大きく売り上げを伸ばすことができました。
他にも、支払日を翌月にずらすメリットはあります。月末時点の現預金残高が大きくなるというメリットです。たとえ5日後には現預金残高が半減するとしても、試算表等は末日で作成しますので、試算表の上では、現預金の残高が膨らみます。当然買掛金も膨らむため、安全性分析ではそれほど変わりませんが、単純に現預金残高を評価する金融機関もあるため、財務面でも有効です。
もうひとつA社が優れている点は、仕入の平均支払サイトを55日にできた点です。A社の代表は支払日を5日後ろにずらすだけでなく、締日を5日前にする交渉も行いました。結果は同じはずですが、支払日を10日伸ばす交渉よりも、支払日を5日伸ばして締日を5日前倒しする交渉の方が通りやすかったようです。
この10日は中小企業にとって大変大きなインパクトがあります。
「支払を先延ばししたところで、いつかは払わなくてはならないのだから一緒でしょう?」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、企業は永遠に生き続けますので、払わなくてはならない日は訪れません。
月の仕入額が1,000万円であれば10日分の333万円は永遠に買掛金となります。仕入額1億円になれば3,333万円です。無利子かつ返済不要の借入と同じ効果です。
取引条件に強く拘っている中小企業様は少ないと感じます。
取引条件がキャッシュフローに与える影響をしっかりと理解し、もっと強く拘ってみてはいかがでしょうか。