【経営コラム】時短と生産性の向上について(その3)


…2015年度の時間当たり労働生産性は、OECD35カ国中20位で42.1ドルです。

…前回のつづきです。

我々日本人は、生産性の向上と時短・労働力の確保を経営的に解決していかねばなりません。
そのためには、生産性の向上を図る、何よりもこれが必要です。

■生産性の向上のために、本来最も必要なことはビジネスモデルの転換・事業立地の変更です。

以前にもご紹介しましたが、「週刊東洋経済、2015年9月12日、特集経営学の教科書」(東洋経済新報社)に寄稿された、「高収益企業の創り方」(東洋経済新報社、三品和広氏〔神戸大学大学院・経営学研究科教授〕)の著者である、三品和広教授の記事を引用して解説いたします。

『…(高収益企業の研究を通じて)成功例に共通している点は一目瞭然だった。「事業立地」がよいということだ。仕事の仕方の工夫や製品開発ではなく、そもそも「何屋さんをやるか」の選び方が優れている。事業立地の考え方では、ある市場の中でどこにポジションするかよりもむしろ、そもそもどの市場を選ぶかが重要になってくる。…』

『…事業の根底には立地(誰に何を売るか)があり、その上に構え(出荷するモノをいかに入手して顧客に届けるか)、製品(いかに個別製品を魅力的に仕立てるか)、管理(いかに品質・原価・納期を守るか)が重層構造を成している。…中期経営計画などで立地や構えに手をつけることなく、製品の刷新や管理の強化を打ち出している企業は数多くあるが、この次元で動きだしたところで、高収益への転換に結び付いた事例はほとんどない。…』

三品教授のおっしゃるように、事業立地を(間違えずに)転換できれば最高でしょう。高収益・高生産性を手にすることができます。ただ、これは容易ではありません。それでも、上記の指摘は、重要な指針として認識しておくべきでしょう。

■ビジネスモデルの転換を図るためのもう一つの指針をご紹介します。
『古代から現代まで2時間で学ぶ・戦略の教科書』(鈴木博毅氏著、ダイヤモンド社)から引用しながら解説いたします。

◆パラダイムの呪縛…
人や企業は、過去の経験に無意識に縛られてしまうようです。無意識の思い込みは、自分自身にある種の境界やルール(無意識の自主規制)のタガをはめてしまいます。これがパラダイムです。
・飲食業とは…であるべきとの思い込み。
・小売業とは…であるべきとの思い込み。
・建設業とは…であるべきとの思い込み。
・税理士とは…であるべきとの思い込み。
・時計とは …であるべきとの思い込み。

このパラダイムこそ、新しい発想を阻害する大きな要因です。多くの人々は、このパラダイムの中でのみ事業を営みます。故に突出した成功を収めることができないのではないでしょうか。

◆パラダイム・シフトとは…
『…将来を予見する能力を高めたいと思うなら、トレンドが目にみえて変わってくるまで待ってはいけない。ルールをいじりはじめた人に注意しなければならない。それが、大きな変化の兆候だからである。…』

◆同著のなかでは、こんな事例が紹介されています。
『「六万二千人のうち、五万人が職を失う」1979年から1981年にスイスで時計をつくっていた職人の話です。世界の時計市場を支配していたスイスが、そのリーダーの座を明け渡した瞬間でした。日本に、です。…シンプルで正確なクォーツ時計の普及で、機械式全盛の時代が終わりを告げたのです。…』

◆経営者として取り組むべきは…
『…パーカーが指摘する戦略とは、将来にうまく対処するためパラダイムの柔軟性を常に最大限高めておくことです。誰かがルールを変えて、新たな成功事例が生まれたとき、そこに意を決して飛び込むことができるようにです。…』

あらゆる業界や分野で、パラダイム・シフトが起きています。または、起きつつあります。
上記の提言を肝に銘じておきましょう。

生産性の向上と時短・労働力の確保、経営者が取組むべき喫緊の課題です。今こそ待ったなしに大ナタを振るうタイミングかも知れません。

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