【実践コラム】金融行政の動向について
…企業にとって説明力がますます重要になります
日本の金融機関は、長らく「金融庁マニュアル」に縛られてきました。金融庁マニュアルの本来の目的は、金融機関が保有している不良債権をあぶりだす
ことでしたが、融資審査に多くの弊害も生み出すこととなりました。「決算書至上主義」、「どこの銀行に行っても答えは同じ」という弊害です。
各金融機関は、金融庁マニュアルに則り、一斉に「格付」を導入しました。格付とは、融資先を決算内容に基づいてランク付けする仕組みですが、決算数値に基づいて機械的に判定されますので、決算書の数値が悪ければ、例え将来性があると分かっていても、融資を行うのが大変難しくなってしまいました。
また、全ての金融機関が同じマニュアルを基にしていますので、どこの金融機関に融資を依頼しても結果は同じという傾向も見られました。金融機関の裁量が小さくなり、極端に言えば、決算書を見て機械的に融資の可否を判断している状況です。
しかし、最近の金融庁の動向を見ていますと、融資の審査基準として、「事業性の評価」を取り入れようとするレポートが多く出されています。決算数値だけではなく、事業も評価しようという動きです。現場レベルに落とし込まれるのはまだ先だと思いますが、企業にとっては、「決算数値が悪くても、事業性を評価して融資をしてくれる金融機関が現れるかもしれない。」という可能性を秘めています。
それでは、「事業性の評価」はどのようにして行うつもりでしょうか?各種レポートから読み取ると、「労働生産性」や「従業員数の増減」などから、事業性の良し悪しを見極めようとしているように感じます。しかし、「企業の事業性を評価する。」ことは、それ程簡単ではありません。やはり企業側からの補足が必要になります。
もちろん今までも自社の事業内容や将来性について理解してもらうことは重要でした。しかし、決算書一辺倒だった今までに比べて、事業性の評価が加味されることになれば、自社の事業内容や将来性を説明することが、ますます重要になります。
金融機関は察してはくれません。また、口頭での伝達も十分ではありません。金融機関の評価ポイントを押さえた説明資料の作成等、自社の事業内容や将来性をしっかりと伝える力が求められます。