【実践コラム】自社にあった金融機関を探しましょう


…金融機関にも個性や戦略があります

金融機関にとって、決算後が追加融資の絶好のチャンスです。決算内容が良ければ、他行に先駆けて融資を提案しようと決算書を待っています。
先日、ある関与先様の決算書を各金融機関に提出したところ、提出してすぐにA銀行から2,000万円の提案がありました。さらに数日後、B行から3,000万円の提案です。しかし、C銀行とD銀行からは何の提案もありませんでした。

金融機関はどこも同じように見えますが、実はそれぞれ戦略が違います。C銀行とD銀行から提案がなかったのは、関与先様の問題ではなく、金融機関側の戦略の問題です。金融機関の戦略の一例をご紹介します。

ある信用金庫は、返済に苦しんではいるが一定のキャッシュフローがあり、かつ不動産を持っている企業に対して、返済期間10年超の超長期貸出を戦略的に行っています。金融庁のルールに則ると「要注意先」となるため、他の金融機関が新規融資を敬遠する企業を敢えて狙っています。

競合が全くいないため、担保が充足していて、かつ返済可能なキャッシュフローのある企業に対して、この信用金庫は3~4%台の高金利で融資をしています。まさにブルーオーシャンです。

この戦略は徹底しており、他行から融資を受けられる状況にまで業績が回復したからと言って、金利を引き下げる交渉をしても、基本的には応じてくれません。金利競争をするぐらいなら他行に行ってください、というスタンスです。そのかわり、また業績が悪化した時に備えて、1,000万円程度の取引は残しておいた方が良いのではないですか?と注文をつけてきます。もちろん金利は3~4%です。

ある地方銀行は業界を絞っています。その業界の中心的な企業に行員を数年間出向させ、業界のことを学ばせたうえで銀行に戻し、審査部に据えるという徹底ぶりです。決算書にあらわれない情報を持っていますので、貸し倒れが少ないのはもちろん、決算書だけで判断している他行が融資できない先に融資をすることもできます。

他にも、保証協会との提携商品だけをひたすら提案し続けている信用組合など、良く知れば、金融機関ごとに違った個性や戦略を持っていることが分かります。貴社がどれ程立派な企業でも、全ての金融機関に好かれることはありません。各金融機関の戦略を良く理解して、自社に合った金融機関を選びましょう。