【実践コラム】「数字に強い」の意味を考える


…バランスの良い経営判断を下すためには、財務諸表の深みを読み取ることが重要です

様々なところで「経営者は数字に強くなくてはならない!」等と言われます。
そもそも、「数字に強い」とはどういう意味でしょうか。
「計算が速い」、「多種多様な公式を操ることができる」、といった「計算能力」を指しているのでしょうか。

高度な数学の知識がなくても、特段経営に支障はないはずです。暗算が苦手ならば電卓が素早く答えを出してくれますし、取引の仕訳が苦手ならば経理の担当者が、給与計算が苦手ならば社労士さんが、税金の計算が苦手ならば税理士さんがサポートしてくれます。経営者自らが計算しなくても、文明の利器や人材を上手に活用して、経営に必要な情報を収集する事は可能です。大切なのは、計算する力ではなく、正しい経営判断を下すために、収集した数字の情報を読み解く力です。

「数字に強い」とは、「数字を読み解く力」の事を指しています。算数ではなく国語です。経営者は、財務諸表を作れなくても問題はありませんが、出来上がった財務諸表を読み解く力は絶対に必要です。財務諸表の読み方を覚えることは、スポーツを始める時にルールを覚えるのと同じぐらい基本的なことです。

ただ、本当に重要なのはその次です。同じ財務諸表でも、税務署、銀行、経営者は、それぞれの立場によって、全く違った見方をします。基礎的な読解力は当然のこととして、3つの目線(「税務(税務署)」、「財務(銀行)」、「経営」)から決算書を読み取れなくてはなりません。その「深み」が分かれば、よりバランスの取れた経営判断を下すことができます。

しかし、3つの目線で財務諸表を読めるようになるためには、実際に税務調査を経験したり、銀行からお金を借りたり、経営者としてのキャリアを積み重ねたり、といった経験と実績が少なからず必要です。書籍に頼っても、この「深み」についての記述があるものは、殆どないと感じます。

では、「財務諸表の深みを読み取ることに何年も時間をかけていられない。」という経営者様はどうすれば良いのでしょうか。簡単ではありませんが、人材を探して任せるしかありません。教科書的に財務諸表を読み語れる人材は星の数ほどいますが、中小零細規模企業の財務諸表の深みを読み語れる人材は本当に希少ですので、以下のポイントを良く見極めて依頼してください。

・経営者や実務担当者として、実際に企業運営に関わる資金繰り管理を行った経験がある。
・経営者や実務担当者として、実際に金融機関から資金調達を行った経験はもちろん、相当数の調達の実績がある。
・経営者や実務担当者として、実際に税務調査を受けた経験がある。
・これらの経験や実績は、自社と同程度の規模の会社で行ったものである。

ビジネスの世界は知識だけでは不十分なようです。必ず経験と実績を確認してください。