【実践コラム】財務面から見たビジネスモデルの検証


…スケールアップの早いビジネスモデルの共通点とは

財務のご相談に来られるお客様の大多数は、新しいビジネスプランに取り組むための資金調達を望んでおられます。これまで多くの新規ビジネスに財務面で関わらせていただきましたが、1年程度で一気に年商数億円の規模にスケールアップする事業もあれば、中々立ち上がらない事業もあります。これらの違いを財務面から検証してみます。

比較的スケールアップの早い事業は、「キャッシュの回りが良い」、もしくは「利益率が高い」という共通点があります。

創業初年度で3億円の売上高を計上した企業の取引条件は、売上金が末締め翌月末回収、外注費の支払いが20日締め翌々月5日となっています。支払日を入金日の5日後に設定することで、支払いを気にすることなく売上を伸ばすことができます。
在庫も持たないビジネスですので、資金が在庫に寝ることもありません。

また、新規事業としてネット販売に取り組み、初年度で1億円の売上高を計上した企業の場合は、まず、現金で仕入を行い、仕入れた商品を平均1か月弱で販売し、販売後1か月弱で代金を回収するという流れです。仕入から代金の回収まで、約2か月弱の期間を要しますが、粗利益率が80%と高いため、仕入から回収までの1サイクル毎に、(再投資)に回せる資金がどんどん膨らみます。

逆に立ち上がりの遅いビジネスの特徴は、受注から納品までの仕掛かり時間が長い、仕入から代金回収までの期間が長い、利益率が低い、といった点が挙げられます。いくら営業力があっても、資金がボトルネックとなって、スケールアップの速度が遅くなります。

新規事業はリスクが高いため、金融機関の融資姿勢は消極的です。多くの融資は望めませんので、調達できる金額の範囲内で事業を軌道に乗せることが極めて重要になります。

創業を含め、これから新規事業に取り組まれる方にとって、そのビジネスが軌道に乗るまでに、一体どれぐらいの資金が必要になるかを、正確に見極めることが重要です。その事業は、(銀行借入を含む)自身の資金力で軌道に乗せられるものかどうかを、慎重に検討しましょう。

新規事業が上手く行かない要因として、営業力の不足がよく挙げられますが、「思った以上に資金が必要なビジネスだった・・・」という資金の見込み違いが案外多いように思います。