【実践コラム】借入の活用と資本の活用


…まずは財務活動の具体的な中身からご説明します

マイナス金利政策の導入に伴い、貸出金利引き下げの動きが見られます。
借入の活用を考えている経営者様も多いと思いますが、借入による調達と資本による調達の効果的な使い分けについて解説します。

会社の総資本は、借入(他人資本)と資本(自己資本)から成り立っています。費用の観点から見ると、借入は固定的な利息の支払いが発生し、資本は業績変動により配当が発生します。

■ 総資本が1,000万円の下記2社を比較します。
・A社は、総資本の100%が資本です。借入はありません。
・B社は、資本が200万円で借入が800万円です。(借入金の金利は3%)

両社ともに80万円の営業利益を出した場合、A社の税引き前利益は80万円となりますが、B社は約24万円の利息が発生しますので、税引き前利益は56万円となります。

しかし、資本で稼いだ税引き前利益の割合で考えると、A社の資本利益率は8%であるのに対して、B社の資本利益率は28%となります。B社の方がA社よりも資本効率が20%高くなっています。このことから、借入を活用した方が、自己資本だけで事業を行うよりも、資本の効率が高くなることが分かります。これを財務レバレッジと呼んでいます。

ただ、逆に営業利益が20万円に減少した場合、A社の税引き前利益は20万円と変わりませんが、B社は、利息の支払い約24万円により、税引き前利益が▲4万円となります。この場合の資本利益率は、A社が2%であるのに対して、B社は▲2%です。財務レバレッジは、プラスだけでなくマイナスにも大きく作用することを忘れてはいけません。

利益が確実に獲得できる状況であれば、借入を積極的に活用することで、効率よく大きな利益を獲得できます。一方、利益があまり取れない状況であれば、反対に、借入利息が利益を圧迫してしまいます。

自社が成長段階にある場合は、借入の積極的な活用を検討してみる価値がありそうです。しかし、新規事業への取組等、赤字が見込まれる場合は、借入よりも資本の活用が適しています。
日本政策金融公庫が取り扱う資本性ローン等にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。