【実践コラム】粗利益の重要性について


…企業の力は売上の大きさではなく粗利益の大きさです

先日、関与先様の営業会議に出席する機会がありました。各担当者が売上実績を順次発表していきます。全体的に、目標比、前月比、前年比、大きく売上高が落ち込んでいるようです。

社長様から、「黒字化を達成するには、あとどれくらいの売上が必要でしょうか。」とのご質問がありましたので、損益分岐点売上高を計算してお答えしました。

年商約2億円が損益分岐ラインですが、6か月が経過した時点で、年商が1億6,000万円のペースで推移しています。上期の不足額4,000万円を残り6か月で補う方法論について活発な議論がなされましたが、不足額が大きすぎて答えが見つかりませんでした。

同社のように、売上高を目標数値としてフォローしている企業様は多いと思います。しかし、目標を掲げるならば、売上目標よりも粗利益目標の方が良いかもしれません。

売上には必ず原価が紐づいています。よって自由に分配できるのは、売上ではなく、売上から原価を差し引いた粗利益です。売上がいくら増えたところで、粗利益が減っては意味がありません。反対に、売上が減っても粗利益が増えれば問題ありません。

同社の粗利益率は18%ですので、損益分岐ラインの売上高2億円を売り上げたときの粗利益は3,600万円になります。
仮に粗利益率を20%まで高めることができれば、売上高は1億8,000万円でも、3,600万円の粗利益を確保することができます。

同社にとって重要なのは、2億円の売上高を確保することではなく、3,600万円の粗利益を確保することです。売上を上げる策がないのであれば、原価を下げられる余地はないかとお聞きしました。すると「たった2%原価率を改善するだけで、損益分岐点がそんなに下がるとは思いませんでした。実は先日も原料の発注漏れがあり、製造に携わるパートさんを遊ばせてしまいました。発注管理やシフト管理を徹底すれば、数パーセントの原価率を改善することは可能だと思います。」等の意見をたくさん聞くことができました。

売上だけを追いかけた場合、4,000万円の不足分をカバーする方法は「売る」以外にありません。「売る」という選択肢しかなければ、「値下げをしてでも売上を確保しよう。」と考えてしまう危険性もあります。

重要なのは売上よりも粗利益です。売上だけでなく、粗利益の極大化を目標に加えてはいかがでしょうか。