【経営コラム】高収益は事業立地で決まる(三品和広教授)


…そもそも、今掘っている場所にお宝は眠っているのか?

■中期経営計画や創業計画の作成等、将来の事業構想を練る場面において重要なことは、事業の領域を検証することです。

下品な例えですが、お宝の埋まっていない地面をいくら上手に掘り進んでも、収穫はありません。
優秀な経営者のもとに、優秀な人材と多額の資金を投下しても、石炭の採掘での事業化は難しいはずです。
採掘を行うなら、シェールガスか、メタンハイドレートの方が良いはずです。
事業の成功の可否は、そのマネージメントや狭義のテクニカルなマーケティング力が主因ではないようです。
事業領域の設定、すべてはここから始まります。
事業領域をどう設定するか、これこそが、経営の最大のテーマです。

■「週刊東洋経済、2015年9月12日、特集経営学の教科書」(東洋経済新報社)に寄稿された、「高収益企業の創り方」(東洋経済新報社、三品和広氏〔神戸大学大学院・経営学研究科教授〕)の著者である、三品和広教授の記事を引用して紹介させていただきます。

『…(高収益企業の研究を通じて)成功例に共通している点は一目瞭然だった。「事業立地」がよいということだ。仕事の仕方の工夫や製品開発ではなく、そもそも「何屋さんをやるか」の選び方が優れている。
事業立地の考え方では、ある市場の中でどこにポジションするかよりもむしろ、そもそもどの市場を選ぶかが重要になってくる。…』

『…事業の根底には立地(誰に何を売るか)があり、その上に構え(出荷するモノをいかに入手して顧客に届けるか)、製品(いかに個別製品を魅力的に仕立てるか)、管理(いかに品質・原価・納期を守るか)が重層構造を成している。…中期経営計画などで立地や構えに手をつけることなく、製品の刷新や管理の強化を打ち出している企業は数多くあるが、この次元で動きだしたところで、高収益への転換に結び付いた事例はほとんどない。…』

『…では、どんな事業立地が好ましいのか。一つはアンアトラクティブな(魅力的でない)立地だ。競合がやりたがらないと、それが最大の参入障壁になる。参入したい人が押し寄せている状態を食い止めるのは、現実には非常に難しい。…また、提供するモノやサービスによって、顧客が極めて大きな利得を手に入れることも、事業立地を選ぶときの重要な条件だ。面白いことに、「儲かるから参入しよう」という人より、「本当に困っているひとを何とか助けたい」という人のほうがうまくいく傾向もある。…』

■『高収益は事業立地で決まる』(三品和広教授)自社にとっての事業立地は適正でしょうか?まずは、この検証から始めてみましょう。

○飲食店であるならば、メニューの改定や従業員の教育も重要ですが、その前に(例えば)業態の検証も必要ではないでしょうか。
○製造業であるならば、主要な卸先のニーズに応えること(下請け)も重要ですが、(例えば)直販できる製品開発も検討すべきではないでしょうか。
○小売店であれば、(例えば)ネット販売のさらなる強化も必要ではないでしょうか。
○農業の六次産業化などは、事業立地見直しの代表例ではないでしょうか。

…農業、水産業は、産業分類では第一次産業に分類され、農畜産物、水産物の生産を行うものとされている。
だが、六次産業は、農畜産物、水産物の生産だけでなく、食品加工(第二次産業)、流通、販売(第三次産業)にも農業者が主体的かつ総合的に関わることによって、加工賃や流通マージンなどの今まで第二次・第三次産業の事業者が得ていた付加価値を、農業者自身が得ることによって農業を活性化させようというものである。

〔ウィキペディアより引用〕

■自社の事業立地を検証し続けることは、経営者にしかできない極めて重要な仕事です。
 であるにも関わらず、案外おろそかにされがちです。

○そもそも、今掘っている場所にお宝は眠っているのか?少し横を掘れば、多くのお宝が見つかる、こんなことはないのか?
○そもそも、スコップで穴を掘っているけど、もっと上手に掘れる道具はないのか?
○そもそも、掘り出そうとしているけど、掘らずに作る方法はないのか?

『高収益は事業立地で決まる』、高収益企業研究の第一人者がおっしゃっておられる言葉です。
真摯に受け止めて、自社の企業経営に生かしましょう。
自社の事業立地の検証を始めましょう。

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