【実践コラム】利益増加施策について
…売上増より粗利率アップをおすすめします。
あなたは売上高1億2千万円、粗利率69%、経常利益240万円の飲食店経営者です。経常利益が少ないため、今期は倍の480万円にしたいと考えています。どのような施策を掲げますでしょうか。
■ 解答例1:新店舗を出店する。
同程度の利益が出る店舗を1店舗増やせば単純に利益は倍になります。実際にこうして店舗を増やしていく経営者も多くおられます。しかし、出店には多額の投資が必要となるため、利益率の低い店舗を増やせば増やすほど、投資回収が長引きます。
■ 解答例2:売上の増加を目指す。
原価率、経費の額がそのままであれば、3%の売上増加で経常利益は倍になります。最もオーソドックスな施策ですが、売上を上げようと思えば、広告を出したり、値引きをしたり、費用の増加を伴う施策が必要ですので、実際には5%程度の売上増が必要です。5%で年間600万円の売上増ですから、客単価3千円のお店であれば年間2,000人、1日あたり5.4人の顧客を増やす必要があります。広告費等の先行投資が必要なうえ大変高い目標です。
■ 解答例3:経費を減らす。
3%の経費削減で経常利益は倍になります。月間20万円弱の経費削減です。無駄が多くあるなら実施したい取組ですが、過度な経費削減は従業員のモチベーション低下につながります。従業員のモチベーションが下がると売上も減ってしまう危険性があります。
■ 解答例4:粗利率を上げる。
2%の粗利率アップで経常利益が倍になります。粗利率の高いメニューを優先的に案内する、原材料費はそのままにして客単価を200円増やす、逆に客単価はそのままにして原価を60円下げるなど、自分の工夫と努力次第で粗利率を上げる方法はいくつもあります。先行投資が不要、かつ自助努力で改善できる範囲が広いので、実は取り組みやすい施策です。
粗利率が高くても(原価率が低くても)たくさん売れる商品は、お客様の満足度が高い、もしくは希少価値の高い商品です。そのような粗利率の高い商品・サービスを生み出すためにはクリエイティブな思考と行動が欠かせません。粗利率の向上を目指すことは会社に活力を与えます。
逆に、安易な安売りなどで売上の増加を狙おうとする思考は、中小企業の場合、商品の質や従業員のモチベーション低下を招きます。売上高や営業利益だけでなく、粗利(率)にもっと着目してはいかがでしょうか。
○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会正会員事務所である当事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。
○銀行融資プランナー協会の正会員である当事務所は、『貴社の財務部長代行』を廉価でお引き受けいたします。