【実践コラム】資金繰りを悪化させる節税
…税金を払えば払うほど資金繰りが楽になるかもしれません
先日、5年ほど前に知り合った社長様と久しぶりにお会いする機会がありました。お会いした当時はいつも資金繰りが厳しいとおっしゃっていた社長様ですが、現在は資金繰りも楽になったようです。
要因をお聞きしたところ、「節税をやめたら楽になりました。」とおっしゃいます。
その社長様はウェブサイトの制作事業で起業しましたが、ある大手企業をクライアントに持っていたため、設立当初からまとまった売上が立っていました。しかし、当時の内情を改めてお聞きすると、節税をすることが正しいと考え、1億円の売上が出来れば、9,990万円の費用を使うようにしていたそうです。
「税金とどう向き合っていくか。」というのは、経営の大きなテーマのひとつです。納税が資金繰りを圧迫することもありますし、税金に対する過度な意識が、会社の成長を妨げることもあります。同社は後者のケースです。
キャッシュフローを最大化することが本来の目的であるはずなのに、節税に意識が向き過ぎると、税金を出来るだけ払わないことが目的になってしまいます。利益を出さないように費用を使えば、税金を少なくするという目的は達成できますが、手元にキャッシュは残りません。財務内容も悪くなり借入もままならないため、資金繰りは当然厳しくなります。
同社の社長様も、「節税を止めた途端に銀行が積極的に融資をしてくれるようになりました。1,000万円近くの税金を支払っても億単位の資金を調達できるので資金には余裕があります。」と言っていましたが、まさにその通りです。
税金は最大でも利益の40%程度です。利益以上に税金を払うことは決してありませんので、税金が原因で倒産することは理論上ありません。ただ、税金の支払いが利益の受取よりも先に来る場合に資金繰りが苦しくなります。この場合の問題は税金ではなくファイナンスです。税金を少なくすることに一生懸命になるのではなく、ファイナンスを適切なタイミングでしっかりと行うことが正解です。
節税をしているのに資金繰りが苦しいと感じておられる社長様は、一度思い切って利益を出してみてはいかがでしょうか。世界が変わるかもしれません。