【実践コラム】政治家による融資の口利きが逆効果となった事例
…口利きは金融機関との信頼関係を失う要因となります
政治家を通じて融資の口利きを依頼するという話を、しばしば耳にしますが、実際のところ効果はあるのでしょうか。
先日ご相談をお受けした事例をご紹介します。
ホームページを見て来所されたA社長のご相談内容は、「資金調達が上手く行かない・・・」ということでした。決算書を確認したところ、融資を断られる原因であろう財務内容の問題点が見つかりました。ただ、事業計画書を作成して説明をすれば、資金調達の可能性はゼロではないと判断できるものです。
早速、事業計画書を作成して銀行を訪問しました。担当者は30歳手前の若い方でしたが、要領を得た受け答えができる大変印象の良い方でした。
まずは、財務分析結果をお見せしながら、銀行がどのように判断しているかを確認していきます。結果、銀行が懸念している点は、弊所にて事前に想定していた通りであることが分かりました。よって、次に事業計画書をお見せし、財務面の課題を解決するストーリーを説明しました。
担当者は、「このストーリーなら本部を説得できるかもしれない。」と理解を示しましたが、その後、「ただ問題は・・・」と神妙に話を切り出しました。話の主旨は次のとおりです。
・数か月前に県会議員が訪れてきて、同社に融資をするよう依頼して帰った。
・その後、本部の方にも金融庁から連絡が入った。
・そのような形で圧力をかけてくるA社長に対して、支店長が相当立腹しているため、当面は融資の検討すら難しいかもしれない。
政治家に融資の口利きをしてもらうという事案は、コンプライアンスが厳しくなった近年では、かなり減っていると感じます。また、その効果についても、政府系金融機関であれば少しは影響力があるかもしれませんが、民間の金融機関に至っては、殆ど効果はないと思います。
金融機関は、人が審査をするのではなく、仕組みで審査をする方向に舵を切ってきましたので、仕組みで出した評価から大きく逸脱する案件を取り上げることは難しくなっています。
無理に押し込もうとするのではなく、仕組みにアジャストできるよう、計画書等の説明資料を準備する方が効果的なようです。