【実践コラム】中小企業経営にとって最も重要な財務指標とは
…現預金月商比率の管理により、倒産の回避と、力相応の投資判断が可能になります
経営の状態を財務面から分析する際に使用されるのが財務指標です。代表的なものに、企業の安全性を見る流動比率や自己資本比率、収益性を見る各種利益率、効率性を見る各種回転率等があります。
銀行の格付も財務指標によってランク付けされています。財務指標は、財務の状況を把握するのに最適な指標ですので、財務指標を経営に役立てるのは大変有益です。
しかし、多くの中小企業経営者にとって、財務指標は決して親しみやすいものではありません。「種類が多すぎて覚えるのに苦労する。」「それぞれの指標の重要度合いが分からない。」といったことが理由ですが、確かに、多くの財務指標を管理するのは大変です。そうであるならば、最も重要な指標をひとつだけ選んで管理してはいかがでしょうか。
資金調達力が弱い中小企業が、常に把握しておくと良い財務指標に「現預金月商比率」があります。現預金月商比率とは、月商の何ヶ月分の現預金を持っているかを表した指標です。この指標を最も重要とする理由は、企業の継続や、経営目的の達成には、単純に「お金」が必要だからです。
まず、会社を倒産させないために、手元現預金が平均月商の1ヶ月分を切らないように管理します。「ふと気づけば資金が底をつきかけていたため、慌てて銀行に借入を申し込んだ。」という話をお聞きしますが、運悪く融資を受けられなかった場合、倒産も覚悟しなくてはならない事態に陥ります。このような事態を避けるためにも、現預金月商比率を常に把握して、現預金が平均月商の1ヶ月分を切りそうになった段階で、すぐに資金調達に動きます。
次に、現預金月商比率を向上させるために、以下の取り組みを行います。
・利益を増やす。
・売上金を早く回収できるよう工夫する。
・支払いを遅らせるよう工夫する。
・積極的に資金調達に動く。
当然ながら利益によって現預金を増やすのが理想ですが、最初は借入を増やしてでも現預金を潤沢に持つことが大切です。現預金が潤沢になれば、現預金月商比率が1ヶ月を切らない程度に、力相応の投資を積極的に行って、利益の増大を目指します。
そして、力相応の投資によって獲得した利益で、借入を減らすことができれば、現預金月商比率だけでなく、すべての財務指標が向上することに繋がります。