【実践コラム】知らないうちに粉飾決算をしていませんか


『粉飾決算は企業の信用を失墜させます。』・・・財務目線の決算書作りが重要です。

金融機関が最も警戒するのが粉飾決算です。
意図的に行われた粉飾だけでなく、結果的に粉飾となっている決算書を提出されることも少なくありません。意図的であれば問題外ですが、意図的でなくとも、管理がおろそかな企業として印象は大変悪くなります。

■ 主な粉飾決算のメカニズムは以下のとおりです。
・架空の売上を立てて利益を増加させる。
・仕入を過小に計上して原価を下げる。
・架空在庫や水増しにより原価を下げる。
・費用を過小に計上して経費を下げる。

粉飾決算のメカニズムを見て頂いたら分かるように、これらのことは経理事務の単純ミスで起こりうる可能性があるということです。
売上伝票を2重で入力した、仕入伝票の入力が漏れていた、在庫を数え間違った、領収証を紛失した・・・等により作成された決算書は結果的に粉飾決算となっており、金融機関側からすると、それが意図的か事務ミスによるものであるかどうかなど判断できません。

金融機関は粉飾決算に騙されないよう最善の注意を払っています。財務指標における異常値のチェックです。
決算書は複式簿記を用いて作成されますので、粉飾は決算書に何らかの痕跡を残します。
架空売上を計上する場合、複式簿記では単純に売上だけを増やすことはできません。
必ず売上高の相手勘定が必要になります。売上高を増やすならば、現金や売掛金等の相手勘定も増やす必要があり、この現金や売掛金の増加が財務指標に異常値として現れます。

粗利益率は売上高に占める粗利益の割合ですので、架空の売上や原価の過少計上は、粗利益率を大きく向上させます。
同じ事業を継続している限り、粗利益率が大幅に変動することは考えにくいので、粗利益率が大きく向上した理由を示すことができなければ、粉飾が疑われます。粗利益率は一例ですが、他にも様々な財務指標で粉飾決算を見抜くことが可能です。

中小企業のほとんどが、税理士事務所に決算書の作成を依頼しています。
税理士事務所は、会社側から提出された会計データを基に、税務の目線で決算を組みますので、間違った会計データが提出されれば、意図しない粉飾決算が出来上がってしまいます。
しかし、金融機関のような財務の目線を持って決算を組めば、会計データの誤りに気づくことが出来るかもしれません。

粉飾決算は企業の信用を大きく失墜させます。
銀行融資プランナー協会では、税務の目線だけではなく、財務の目線を付加して、意図しない粉飾決算にならないよう努めております。

尾川充広(銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー)