【実践コラム】中小企業の財務戦略


…借りられる時に借りられるだけ借りておくことが重要です

大企業は余分な借入をしないように資金管理を行っています。
無駄な金利を支払わないためです。例えば、グループ企業が各々で資金調達を行っている場合、グループ全体のキャッシュを一か所に集約し、まずはグループ間で余剰資金を融通し合う仕組みを構築します。これによりグループ全体の借入額と支払金利を減少させることができます。大企業の財務戦略は余分な借入れをしないことです。

中小企業の資金戦略は大企業の戦略とは違います。信用力に劣る中小企業は、借りたいときにいつでも借りられるとは限りません。また、新株やCPの発行といった資金調達の選択肢も持っておらず、調達先の殆どは銀行です。

銀行は預金者から預かった資金を融資する間接金融ですので、リスクのある先には決して融資をしません。経営が苦しくなった時に銀行に助けを求めても、銀行が融資をしてくれないのはこのためです。もちろん、セーフティネット融資など、国による救済制度は保証協会などで用意されておりますが、利用要件に制限があり、必ずしも利用できるとは限りません。

よって、中小企業の場合、使う目的のない資金であっても、借入ができる時に最大限の借入をしておくことが望ましいです。
極端な例ですが、融資を受けて別口座にほったらかしにしておくだけでも意味があります。

これは有事に対する備えです。経営状態が悪くなった時に銀行が融資をしてくれないのであれば、経営状態が良い時に借入をして、キャッシュを手元に置いておくことが備えになります。
借入金に手をつけなければ、借入と同額の預金を有しているだけですので何らリスクはありません。デメリットは金利が発生することですが、いざと言う時に資金を確保できる保険料と考えれば納得できます。ただ、手元に大きなお金があると気が大きくなり、気前よく使ってしまった結果負債だけが残った、とならないように気をつけてください。

教科書通りの財務戦略ではありませんので、財務を学んだことがある方からすれば、少し違和感があるかもしれません。銀行の担当者も眉をひそめるかもしれません。しかし、中小企業が生き抜くためには、これも正しい戦略です。